千鶴夕登の日々雑談

夕登と沙樹由の会話形式で雑談をしているブログです。

女教師友原春菜を作る

 夕登:今回のコミケはサークルは落選したし、一般参加をしようとしたものの猛暑に負けて結局行かなかった。
沙樹由:暑さと天気はどうしても気になりましたね。
 夕登:このまま夏に同人活動をしないのは寂しいので、新たに「処女宮」の二次創作小説「女教師友原春菜を作る」を書きました。
沙樹由:一応これが夏の同人活動となりますね。
 夕登:何時もよりだいぶ短い話ですが、この夏の処女宮作品と言う事でよろしくお願いします。

 

 

処女宮二次創作小説「女教師友原春菜を作る」

 

 人が憧れる職業として教師が挙げられると思う。
 そこで私も将来に備えて、自分ならどんな風になるのか試したくなり、実行をする事に決めた。
 場所は夏休みで使われていない自分も通う教室。生徒は秋穂ちゃんと陸上部の朝練を終えたチイちゃん。そして図書館へ夏休みの宿題をしに来た委員長さんの三人だ。

「それでは授業を開始します」

 私は教壇へ立ち、生徒役の三人は一番前の席で並んで座っている。
 真ん中は委員長さんで、私から見て右に秋穂ちゃん、左にチイちゃんという配置になっている。
 特に指定した配置ではなく自然と決まった物だけど、秋穂ちゃんとチイちゃんの仲は良いと言えないし、クラスのまとめ役となる委員長さんが中央なのは心強く、なかなかいいんじゃないかと思う。

「なあ春菜、授業の前に格好はどうにかならないのか? 制服だから全然教師に見えないぞ」
「え~~でも、先生達が着るような洋服は持っていないよ」

 チイちゃんが言う事も分かる。
 私も形から入りたいと考えていたけど、寄宿舎生は普段着を着る事が殆どない為、多く持っていないし、その中で教師に見える様な物は無かった。

「教員の制服はないし、生徒の春菜さんが何を選んでも無理はあると思うよ?」
「そうなんだよね……大人っぽく見えないんだよね……まだ子供だからね……」

 委員長さんに言われるまでも無く、私もそれは分かっていた。
 教師にも制服があればいいけれど、残念ながらない。
 なので子供の私が何を選んで着ても、教師という大人へ近づくのは難しかった。

「だったら、ジャージでいいじゃないか、着ている先生もいるぞ」
「それだと体育教師だよ……教室での授業なんて殆どしないじゃない……」

 陸上部でもあるチイちゃんは、私以上にジャージ姿の先生を見慣れているので印象に残っていると思うけど、運動神経が良いと言えない私として、目指しているのとは外れているので採用できなかった。

「そう思いまして、教師に見える服を持ってきましたよ。これを制服の上から着てください」

 秋穂ちゃんは足元に置いてある大きな紙袋から、白い服を取り出した。

「ええ? 秋穂ちゃん本当に? うわ、嬉しいよ……って、なんか長いけど……」

 制服の上から羽織るので大き目の服なのは分かるけど、丈が長く、想像していた大人っぽいものとは違う様に思えた。
 とはいえ、秋穂ちゃんが私の為に用意してくれたものだし、真っ白な服は清潔感に溢れて教師らしく見える要素の一つに思えたので、早速着る。

「この丈の長さ……白さは……ああ、そうか、これは白衣なんだ。確かに教師っぽくなるかも?」
「白衣だと教師というよりも、保健室の先生かしらね」

 委員長さんからの指摘で、まだ私が教師として見えるには足りない様だった。

「う~~ん、白衣を着て授業をする教師は居ないし、そっちになるのかな? ねえ、まだ何か足りない?」

 白衣には教師以外にもお医者さんの印象もある。
 それに学院では常に着ている教師もいないだけに、保健室の先生を真っ先に思い浮かべそうになる。
 ただ私は保健室の先生を見た事がないので、直ぐに思い浮かべられなかったけど。

「はっきり言って、春菜は誰かに教えられる賢い人に見えない」
「うっ! それは皆が私の事を知っているからだし……そういう内面はどうにもできないよ……」

 チイちゃんからのきつい一言は、私の体を貫くには十分な攻撃力を持っていた。
 此処にいる皆は私の成績をだいたい把握しているので、人に教えられる程の成績が無いのも知られている。
 仮にこのみちゃんが勉強を教えて欲しいと来ても、まず確実に断る自信があるぐらいなので、そんなのはとても教師と言えない。

「知的な印象を持ちたいのでしたら眼鏡を掛けてはどうですか? シスター・アンジェラと同じフレームの物を用意しました」
「秋穂ちゃん、あ、あのシスター・アンジェラと同じ物を用意できたの? それを掛ければ私は『絶対零度の友原春菜』に……」

 威厳に関して、この学院でシスター・アンジェラ以上の存在を私は知らない。
 同じ型の眼鏡を掛ける事で、その威厳の一部でも私に宿れば、白衣との相乗効果により教師へと一歩近づく気がして来た。

「これがその眼鏡です。フレームだけではなく、度なしレンズを付けることで、より本物へ近くしてあります」
「凄い! 凄いよ、秋穂ちゃん! これで私も教師に……」

 眼鏡をするだけで知的な印象を人に与える。ここにいる秋穂ちゃんと委員長さんは実際に勉強は出来て、チイちゃんは今一つなので、事実として揺らがない。
 更にシスター・アンジェラと同じフレームとなれば、大人の魅力と威厳を兼ね備えた、正に皆から尊敬される教師へと私はなれる。
 そんな確信を胸に、私は眼鏡を掛けた。

「ふふん! どう? 頭が良い人に見えるでしょ?」

 この台詞自体、頭が良いとは思えないけれど、今は目をつぶる。
 レンズには度が入っていないので良く見える効果はないけど、私が知っている眼鏡を掛けている人は頭が良いだけに、自分もその仲間入りをした気分にはなれた。

「う~~ん、多少頭は良く見えるけど、威厳は全くないなぁ」

 得意になっていた私を、チイちゃんにはあっさり否定してしまう。

「嘘でしょ? 白衣で大人っぽさを出しつつ、シスター・アンジェラと同じ眼鏡を掛ける事で威厳も加えた姿なのに……」

 頭の中ではシスター・アンジェラを重ねて大人の姿を想像していただけに、チイちゃんからの言葉は意外過ぎた。

「子供が背伸びをして大人になっている感じがするよね、だから威厳が出て来ていないと思うわ」

 更に委員長さんから追い打ちを受けていまう。

「うぅぅ……でも、体型はどうしようもないよ……まだまだ成長期だし……多分」
「私は今の春奈先輩の姿も好きですよ、教師というよりも生徒ですが、とても似合いますよ」
「ううううぅぅぅ……ありがとう秋穂ちゃん。今の言葉で物凄く救われたよ……」

 教師に見えなくても、白衣と眼鏡が似合うと言われのはとても嬉しい、秋穂ちゃんからの言葉は将来の夢へと繋げてくれた。

「ですから、体型も大人へ見えるようにすれば、よりお似合いになりますよ。そう思いまして更にこんな物も用意しました」
「大きい上履きと……それは何かな?」

 秋穂ちゃんは紙袋から上履きと、大きなお椀状の良く分からない物を二つ取り出したが、白衣や眼鏡と違い何に使う物なのか想像出来なかった。

「この上履きはシークレットシューズになっていまして、身長を高くします。そしてこれは胸パッドですので、大きくなりますよ」
「それで身長と胸が大きくなるの? 凄いじゃない秋穂ちゃんっ!」

 自分の体の中で成長して欲しい部分として、身長と胸は真っ先に求めたい。
 そんな夢の様な物が目の前に用意され、私は思わず声を上げてしまう。

「大きいのを選びましたから、ブラジャーはこれをどうぞ」
「おお~~でかい!」

 これまで見た事もなく、今後成長したとしても到達出来ないかもしれない大きなカップのブラジャーまで用意され、私の気持ちは昂ってしまう。

「隣の教室で付けて来てはどうでしょうか、パッドのやり方が分からなければ呼んでください」
「うん、早速試して来るね」

 上履きだけならともかく下着までともなれば、着替えている所を友達に見せるのは恥ずかしい。
 幸い夏休み期間なので誰もいない教室は沢山あり、場所には困らない。
 私は大人への変身セットを抱えて教室を出る時、チイちゃんと委員長さんを表情を伺うが、期待をしているというよりも呆れている様に見えた。

(見てなさい、びっくりさせてあげるんだから!)

 この魔法のアイテムがあれば、私は大人へなれる、教師へと一歩近づける。溢れる想いを抑えきれず、隣の教室へ入ると外からも見えないように端っこで着替える。

「こ、これは……谷間が出来ている! 私の胸に巨乳の証が!」

 嬉しさのあまり、教室内で上半身裸になる恥ずかしさを忘れてまずはブラジャーを付けた。
 当然大きさは合っていなく、あまりにも空間が開いているので少し悲しい気持ちを抱いたものの、パッドを入れた状態を見た時の嬉しさが、全てを掻き消してくれた。
 これまで感じた事のない胸への圧迫感、更に、ブラジャーの寄せて上げる効果も合わさり、私には正真正銘自分の胸による谷間が作られたからだ。

「これで制服を着ると……うわわ……胸がきついなぁ~~うへへへぇ……」

 胸が押されるのはそれだけ大きくなった証明。少し苦しいけれど、それが歓びへと変換され、つい変な笑い声を漏らしてしまった。

「次は上履きよね……大きくて重いから、背を高くする効果は見た人に知られそうだけど……今だけだし良いか」

 形としては上履きだけど、身長を高くする分上げ底になっているので、どうしても不自然さは拭えない。
 普段の使用には向かないけど、この場だけなら問題は無さそうだった。

「どれどれ……やっぱり重いな……これで立つと……え? なにこれ、怖いぐらい無茶苦茶身長が高くなったよ」

 靴の外観から受けた想像よりも実際の視点は高くなり、ちょっと怖いぐらいになる。

「大人って、こんな高い所から見ているんだ……」

 いきなり高くなった景色に戸惑いつつ、私はこの素晴らしい姿を皆に見せる為、直ぐにでも隣の教室へ戻りたかったが、一歩踏み出した瞬間問題が発生し、出来なかった。

「あ……歩くのが怖い……む、難しい……」

 突然視点が変わり不安定になっただけではなく、足元を確認しようとしても大きくなった胸に阻まれてしまい、靴の重さも合わさって体を安定させるだけでも苦労する。

「皆さん……あ、お……とと……おはよう……ございます……」

 なんとか教室へ辿り着き、担任教師らしく入ろうとしたものの、バランスを取る方へ意識は行ってしまい、格好良くとはいかなかった。

「元の姿を知っているから違和感はあるけど、白衣の丈も丁度良いし、大人っぽくは見えるわね」
「本当? 自分ではまだ慣れていなくて、歩くのもままならないけど」

 真面目な委員長さんから褒められると、今の姿に自信を持てた。

「その靴で身長を伸ばしたんだろ? かなり高くなっているけど、どのぐらいなんだ?」
「ふふん、かなり高いよ。感覚的に一メートルぐらい」

 何時もより高い位置からチイちゃんを見下ろす優越感に、私はつい大袈裟な数値を言ってしまう。

「そんな訳あるか! 二メートルを優に超える事になる」
「あくまでも感覚だよ、バランスを取るのにも苦労しているぐらいなんだから」

 言い過ぎな数字なのは分かっているが、台へ上がるのとは違い、実際に自分の身長が伸びているので、一メートルぐらいの思いでいる。

「今の春菜先輩は、シスター・アンジェラと同じ身長になりますよ。元より十一センチ高いです」
「へぇ、これがシスター・アンジェラの視点なんだ……ふ~~ん」

 秋穂ちゃんからシスター・アンジェラと同じと教えられると、数字以上にこの高さへ大きな意味を抱く。
 ただ視点が高くなっただけではなく、生徒を見落とさない絶対的優位な位置へいる様にも思えた。

「……あ、身長が同じと言う事は……この胸の大きさも……」

 高さの基準として選んだのなら、胸の大きさもシスター・アンジェラと同じと考える方が自然だと思う。
 シスターの服で体の凹凸は分かり難いけど、まさかここまで大きな物を隠していたのを想像すると、驚くしかなかった。

「春菜先輩、胸はシスター・アンジェラ以上ですよ」
「ほ、本当? な、なんかそれはそれで嬉しくなるな……」

 流石にここまで大きくないかと安堵すると同時に、体の一部でもシスター・アンジェラを自分上回り嬉しくなる。

「嬉しいって、その胸は偽物じゃないか」
「チイちゃん、そこ黙っていて」

 折角夢見心地になっているのに、チイちゃんは現実へと戻そうとするので遮る。

「ん~~確かに、身長が伸びて胸も大きく大人っぽいけれど、リボンは外した方が良いんんじゃないかしら? 大人でそこまで大きなのをしているのはそう見ないよ? 教師なら尚更よ」
「ん~~そうかな……だよね……」

 気にしていなかったものの、委員長さんから指摘を受けて、学院に居る教師たちを思い浮かべると、そもそもリボンをしている人は殆ど居なく、していても小さい物だった。

「あ~~、これは絶対生徒から『デカリボン先生』って言われるぞ」
「そんな呼ばれ方、威厳も親しみも感じられなくて嫌だよ、もう、しょうがないなぁ……外すよ」

 チイちゃんから呼ばれると余計にそう思えるだけに、更に教師へとなる為に、私は頭のリボンを解いた。
 すると何故か皆が、私へ視線を向けて来た。

「わ、わわ、皆、ど、どうしたの? 私、何か変な事をした?」

 ただリボンを解いただけなのに、皆の反応は明らかにそれ以上の物を感じる。
 リボンに何かおかしい所があったのかと思い見直すが、見慣れた物でしかなかった。

「「「誰?」」」
「はい?」

 三人声が綺麗に重なり、言葉から皆がどんな反応をしているかが分かった。
 明らかに友達ではなく、赤の他人を見るような目だった。

「な、何を言ってるのかな、春菜だよ、ほら、リボンを取っただけでそんな反応をしないでよ!」

 慌ててリボンを付け直すと皆が笑い出し、冗談だと分かるけど、私の中で何が大きく占めるかを教えられた気がして慌ててしまう。

「春菜先輩冗談ですよ、でも、リボンを付けたいのでしたら色々持ってきましたので、試してみますか?」
「ありがとう秋穂ちゃん、大人でも似合うのを探そうよ」
「よし、私も春菜がデカリボン先生と言われないように手伝うよ」
「チイちゃん、ちゃんと選んでよね」

 秋穂ちゃんは多種多様なリボンを用意していた。それをチイちゃんと二人で、私にリボンを結んで感想を言うと解いて、次のを試していた。
 こうして私の教師への道は、こうしてまだまだ続くのでした。

 

 

 目の前で、椅子に座っている春菜さんへ、二ノ宮さんと佐倉木さんが次々にリボンを結んでは解いている。
 仲が良いと言えない二人が楽しそうにしているのだから、これはとても貴重な場面だと言える。

(春菜さん、自分が遊ばれている事に気が付いていない……)

 外見を教師へ近づけるために、春菜さんもやる気に満ちているが、実際は着せ替え人形の様に遊ばれているに過ぎない。
 あまりにも準備が良すぎるので、二ノ宮さんが初めから考えていた事なんだろうけど、それに全く気が付かない春菜さんもどうかと私は思う。

「ねえねえ、委員長さんの意見も訊きたいけど、どうかな?」
「私はこめかみの所から細い三つ編みを作って、先に小さいリボンをするのが良いかな?」

 二ノ宮さんの意図を理解した私だが、それを春菜さんに伝える気は起きなかった。
 自分好みに人の髪を弄るなどそうある事でもない、こんな機会を逃すなど出来ず、私も参加を決める。

「谷山先輩、このリボンで良いですか?」
「うんうん、春菜さんにはやっぱり赤だと思うからね」

 二ノ宮さんからリボンを受けとった時、お互いに目で合図を送り、この面白い時を出来るだけ長く続けようと考えた。

 

 おわり